3.  山菜                                                                                                                              

 6月は梅雨、田植えの時期だ。当然アウトドア派にとっては面白くない時期ではあるが雨カッパを着てでも楽しめるものが山菜採りだ。蒜山に自生する山菜、薬草類は600種にのぼると言われているが、この時期(5月から6月)には、タラの芽、ウド゙、ヘイトコ、ワラビ゙、ゼンマイ、山フキなどの山菜を代表するものが採れる。  以前は蒜山高原のどの土地に入り込んで山菜採りをしてもしかられることは無かったが、最近は山菜も健康食品として見直され、「商品」としての地位が与えられてから、やたらに人様の土地に入り込んで採るわけにもいかなくなった。採る場合は、その近所の住民に声をかけてから採ることをお願いしたい。そんなことをしてまで採らなくても、とりあえず食べたい人におすすめのスポットがある。蒜山インターチェンジ横の「風の家」だ。ここは6月中は朝830分から野菜市がオープンする。値段は時期によって変動があるが、絶対に安い。実は私も最近、労せず手軽に山菜を食するには、ここで買うのが一番と早朝から買いに行っている。特に「ウド」などは立派な天然物を売っている。最近では商売人もまとめ買いにきているらしい。人気商品はすぐ売れるのでお早めに。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

     

 

山菜屋HPより引用画像

 

 

JAまにわHPより引用画像

 

 4. 大根

 7月頃の蒜山の旬の食材と言えば、何と言っても大根だ。大根には夏大根と秋大根の2品種と思われがちだが、実は最近、春から秋にかけて気温、土壌、天候などにあわせた10品種ぐらいの中から、各栽培農家が3品種ほどに絞込み、順次種まきを行い、2ヶ月後ぐらいに後に、収穫している。とくに最近は「青首大根」と呼ばれる「辛くない大根」に人気があり、大方の農家が「辛くない大根」づくりに励んでいる。逆に私のような中年は、少し辛い目の大根の方が好きだ。とくにこれからの夏に合う「おろしソバ」はこれでないといただけない。「辛くない大根」でもしっぽの方からおろすと「辛くなる」と言われているので、辛いのがお好きな方は是非どうぞ。蒜山大根は20年ほど前の最盛期には蒜山地域で700町歩ほどの栽培面積を誇り、東京市場にも出荷し、生産高日本一にもなった。今は土壌を休ませるため、100~120町歩ぐらいまで生産を縮小しているが、その分品質が飛躍的に良くなり、「黒シン、赤シン」は、ほとんど姿を消している。

 

 

 

5. 星空

 星を観測する最良の時期は、空気が一番澄んだ冬と相場は決まっているが、問題は星を見る目的によって最良の時期が変わる。私の場合は星を観測するのでなく、とくに暑い夏の夜、一杯飲んだ後などに、突然訪れる開放感に浸りたい衝動が、「星空を見る」という行為となって現れる。私がよくやるパターンは、風呂上りなどに、野外キャンプ用の防水マット(ダンボールでも何でもよい)を会社の駐車場の中央に敷き、ゴロンと大の字に寝っころがる。すると自然にプラネタリウムの中に入った感じで、満天の星空が眼に飛び込んでくる。正直言って金星が判る程度で、どれがどう言う星座かも判らない。いわゆる「ボーット」見上げていると、結構夜空には動きがある。大概は飛行機や人工衛星だが、流れ星もみられる。去年の8月にはしし座流星群やペルセウス座流星群がよくみられた。今年のペルセウス座流星群は蒜山では天候が悪く見られなかったが、地域によっては見られたらしい。暑い夏の夜、涼しい風にあたりながら、寝ながら星を見るという行為は誰でもやっているようだが、案外少ないようだ。一度やったらやみつきになる。本格的に天体観測するのであれば旧川上村の「鬼面台」がオススメ、車の寄り付きや、じゃまな光が少ないのでマニアに人気がある。しかし私のような星の見方であれば、蒜山は「蚊」もいないし、どこでもOK。すばらしい星空を見上げてみてはいかがですか? ただし駐車場で寝っころがる場合は、くれぐれも車に注意してくださいね。そして寝てしまわないように・・・。

 

SpaceHP「冬の星座」より引用画像

 

 

大美酒造HPより

 

  

  

蒜山ワイHPより引用画像 通販あり

 

 

6.  地酒

 この時期になると、恋しくなるのがコタツで囲む鍋料理。それにつきものが酒、とくに日本酒だ。蒜山の地酒には、清酒「美保鶴」がある。この酒は名水百選「塩釜の水」でしこまれており、蒜山地域だけで販売されている。実は今年の2月、はじめて酒蔵なるものを見学させてもらった。コタツの中で麹を育てるなど、未だに手作りを感じさせる現場ではあったが、凛とした冷気に包まれたなかに、悠久の時の流れと、どっしりとした安定感が漂っていた。絞りたての清酒の味は、言葉では言い尽くせない、ふくよかな味で、酒通にはこたえられない美味なものである。この絞りたての原酒は2月末から3月初めごろ、美保鶴「原酒しぼりたて」として、地元酒販店から予約注文で、限定販売されている。他に純米酒「高原の泉」や赤米酒「うあはん」、美保鶴「原酒」などの銘柄もあるが、私は気軽に飲める、旧二級酒の美保鶴上選が一番口に合う。
 他に地酒と言えば日本酒だけでなく、ワインがある。この「ひるぜんワイン」と名付けられたワインの特色は、野生に近い山ぶどうから作られていることだ。したがって赤ワインであり、酸味と香りが強く、辛口のワイン通には人気がある。辛口ゆえに寝かすと、しぶみがとれ、まろやかになる。地元のワイン通は、ひそかに自宅の蔵にそっと寝かせ、お気に入りのビンテージワインを育成している。最近は赤ワイン以外の白ワイン入りの「ロゼ」にも人気が出ている。また2006新作赤ワインは2006年国産ワインコンクール奨励賞を受賞している。やはり蒜山名物ジンギスカンには赤ワインがお似合いだ。

 

7.  松葉ガニ

 冬の味覚の王者は、何といっても「松葉ガニ」また、日本海沿岸のとれる場所によって「ズワイガニ」「越前ガニ」などとも呼ばれている。・・・しかし、ちょっとおかしいな・・・蒜山高原は山奥ではないか? と思われるに違いない。確かにそのとおりで、保冷車の無かった30年前頃までは、この地域の海の幸といえば、赤崎あたりの行商のおじさんが売りにくる「塩さば、干かれい、干しワカメ」が定番だった。ところが保冷車の性能向上によって、20年前頃から安く鮮度の良い海の幸が蒜山高原の食卓にも現れはじめ、横断自動車道岡山米子線開通以後、松葉ガニは冬の一番の食材に踊り出ることになった。地図をながめ、時間距離を測ってみると、鳥取県中部海岸まで車で約40分、境港のある鳥取県西部海岸まで約50分に立地している。したがって自然に地元の鮮魚店で安くて鮮度の良い松葉ガニが手に入る。一般に松葉ガニといわれているのはオスでメスは極端に小さく、子を抱いているところから地元では「親ガニ」ともとばれている。実は、この「親ガニ」は小ぶりだが身はしっかりしており、美味くてしかも安い。少々食べ方に「こつ」がいるが、この時期 地元ではほとんどこの「親ガニ」を味噌汁の具として食している。私などは、この「親ガニ」こそ「松葉ガニ」と信じ、大いに食べあさっている。

 

 

鳥取県さかなセンター内

 三光水産HPより引用画像

 

 

 

 

地産地消を楽しむHP「白菜漬けの作り方」より引用画像 

 

 

8.  白菜漬

 「白菜漬」を蒜山では「つけな」という。今回は、この「つけな」を紹介しよう。「つけな」のおいしい時期は、外気が零下になる12月後半から3月中頃までが旬で、樽からあげたての少々すっぱめで、ジャリジャリ凍りついて、口に入れた触感がヒリヒリくるぐらいなものがとくにおいしい。日本酒や「塩さば」など酸性食品とコンビネーションがよく、あたたかい「ごはん」とセットで食すると、いくらでもおいしくいただける。また、凍り付いた「つけな」を「七輪」であぶりながら熱燗で一杯 やると、ついつい調子が出て、ぶったおれるまで飲み続けてしまうのも、この地方特有の文化なのかもしれない。一般的に「白菜漬」は荒塩、鰹節、昆布、赤とうがらしなどを入れ漬けるが、我が家の「つけな」は荒塩、鰹節、昆布だけで漬ける。おいしく漬けるには、外気が零下になる時期に漬け込むことと、漬ける「樽」を選ぶことのようだ。最近は漬物用の「樽」として、プラスチック製が使われているが、これが美味くない。やはり長年使い続けている古びた木樽には、良質の乳酸菌がしみ込んでおり、漬け込みがはじまるといっきに生返り、うまみ成分をどしどし誕生させるようだ。と、言いながら我が家でも、やはりプラスチックの樽で、私は、女房の実家の使い古した木樽で漬けた「つけな」は一味違うと言い続けているが、女房はどうもプラスチックがお気に入りのようだ。

 

9.  イノシシ

 日本の民話にはイノシシと猟師の話が多い。近年は野生イノシシが驚異的に繁殖し、山間部の田畑を荒しまわっていると聞くが、蒜山地域の場合はとくに増えている様子は無い。「シシ肉」の野生と養殖の味の差は、舌の肥えた美食家でなくとも歴然とわかる。とくに「野生のシシ肉」の美味さは白身すなわち脂身の部分で、寒く長い冬を越すための栄養分がしっかり含蓄されている。赤身の部分は野山を駆け回って築かれた筋肉の固まりであり、噛めば噛むほど独特のうまさと味わいがある。料理方法は鍋から炭火焼きまで色々あるが、猟師連中に言わせれば、あばら骨についた肉に塩だけふりかけ、炭火でじっくり焼き、しゃぶりながら酒をあおるのが一番うまい「通」の食い方としている。確かに塩だけで、充分おいしいが、私の最も好きな食べ方は、炭火のみそ焼きだ。味噌タレは、田舎味噌に酒、みりん少々を混ぜ合わせ、イノシシ肉を一口サイズにし、1時間ほど漬け込んだあと、とろ火で水分が乾燥するぐらいまでゆっくり焼く。そうすると肉にタレがしみ込み、イノシシ肉の臭みも消え、うまみ成分が加わり絶妙の味がでる。雪の降る日、気の合う仲間と炭火を囲み、焼けぐわいを確かめながら、一杯飲むことはまこと結構なもので、ここに住んでよかったと感じる瞬間でもある。野生イノシシの旬は冬を迎える12月から雪のある3月までで、雪解けの4月に入るとすべての動物もそうだが、蓄積していた栄養分を使いきるため、極端に味が落ちる。蒜山高原での野生イノシシ肉の入手方法としては、現在は通販しかありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

いのしし加工販売センターHPより引用画像 通販あり

 

 

 

 

 

淡水魚図鑑HP「カニ類」より引用画像

 

 

10.さわがに

 4月では少し遅いが、雪解け時期の楽しみの一つに「さわがに掘り」がある。 大体、「さわがに」がいる場所は、蒜山高原では北斜面の鬱蒼とした沢の比較的勾配の急な「砂だまり」の中だ。雪解け時期に産卵し、砂地の中でミズゴケや土中のプランクトンなどを食べながら成長する。産まれたばかりの「さわがに」は砂地にもぐっており上から眺めているだけでは見つけられない。砂地をスコップでひたすら掻き起こし、「とうし」にかき集め濾過し採取する。取れるときは平均1cmから2cm程度の「さわがに」が集団で取れる。4月以降は2cm以上に成長してくるが、雪解けの時期取れたもの以外、地元のものは食べない。雪解け以後は「けもののフン」なども食べるため、「ジストマ」などを警戒するからだ。したがって地元では油で揚げるか、しっかり煮沸して食べる。料理方法としては、 から揚げして塩をかけて食べるのが無難と思うが、私はそうめんつゆでしっかり煮たものが一番好きだ。から揚げは香ばしくパリパリいただけるし、そうめんつゆで煮たものはシャリシャリしており、一杯やる時の最高の「おつまみ」となる。

 

 

 

11. カタクリの花

 蒜山の野草は数多いが、その中でひときわ人気を集めているのがカタクリの花だ。姿、形のエレガントさもあるが、なんといっても厳しい冬を乗り越え、やっと春になり、花咲ける時期となった喜びが感じられる。この喜びは、同じように冬を乗り越えた人間に、共感するところがあるからかもしれない。このカタクリの花は、5月初めから中頃まで上蒜山9合目あたりから頂上に至る登山道北斜面のクマザサの中に群生している。群生地に行く登山道入口は、八束村の百合原牧場の奥にある。駐車場は無いが、牧場のじゃまにならないような場所を見つけ置くしかない。登山道入り口までは牧場の中に慣習道のような一本の道がついている。時期によってはジャージー牛の放牧が始まっており牛たちが寄ってくるが、ジャージー牛は人なつっこく囲まれても、なめられるぐらいで、安心して歩けばよい。2合目から6号目ぐらいまでは木組みの階段が付けられているが、結構急勾配で花見のつもりで登るといたい目にあう。標高は1200bしかないが、実行程600bは結構きつい。しっかり山登りの装備で登ることをおすすめする。中高年であれば登り2時間、カタクリの花を観察し、せっかくだから上蒜山頂上(この山の頂上からは樹木がじゃまして眺望がない)まで足を伸ばして1時間、下り1時間半の4時間半 は見ておいたほうが賢明。

 

 

 

 

 

 

友遊山歩HP「上蒜山―中蒜山」からの引用画像

 

 

 

 

  

 

  

 

小鳥たち」HPより引用画像

 

 

12. 小鳥

 5月から7月頃にかけて渡り鳥が帰ってくる。鳥のことは正直知らないことばかりだが、毎年この時期にだけ庭で出会う鳥だけは覚えている。うちの庭にはツバメが一番多く出入りしているが、シジュウカラも出入りしている。姿を見かけると「ようこそお帰り」の気分ではあるが、去年来た同じ鳥かどうか確かめようがない。地元の小学校では例年鳥の巣箱づくりがおこなわれる。我が家の娘たちも小学生時代には、庭の「トチの木」に巣箱をくくりつけ「どうぞこの巣箱をお使いください」と心で願い、そっと窓からまだか、まだかと観察していた。小鳥が巣箱に出入りするとき、妙に警戒する動きをすると、卵を産んでいる。懐中電灯で小さい穴から 中をのぞくと3個から4個の卵が見える。卵は一週間ほどで孵化し、かわいいひよこが誕生する。この時期一番警戒しなければならないのはヘビだが、徹底した駆除を行ったので、近年は見かけなくなった。近年のひよこの被害は、巣立ち前に巣箱から落ちて死ぬという現象である。一般的な巣箱は「ハト時計」形式だが、これがいけないようだ。いきなり巣穴から出て落下し死んでしまう。今度巣箱を取付けるときは、ひよこが巣穴から出ても落ちないように、かごを取付けておこうと思っている。

 

 

 

13. 雪

 秋から冬にかけての蒜山は、季節の変化がことのほか厳しい。その時は「ひるぜん」に住んでいることを強烈に意識させてくれる。
だいたい雪が降るまでには、段階がある。まず朝霜がおりだす。霜がおりると、紅葉が残っていても、その日一日で色が落ち、葉が枯れる。だから、生あるものは何かに追われるように、忙しくせっせと冬支度をする時期だ。大山が冠雪するのもこの頃だ。その2、3週間後ぐらいから蒜山も冠雪し、ある朝、外を見ると一面の雪景色となる。しかし、その初雪はすぐ解け、凍土のできるまで、降ったり解けたりを2、3度繰り返しながら、根雪に覆われた「雪国蒜山」に変貌していく。だから、この時期は秋を惜しんでいる余裕は無く、来たるべき雪に心が奪われ、年末のあわただしさと重なり、せわしく緊張感のある時期を過ごしている。野生の「たぬき」が道路で車にはねられ死んでいるのもこの頃が一番多い。それでも、朝、起きて一面の銀世界を見ると「とうとう雪がきた」と、とたんに妙な落ち着きが出てしまう。もっとも、こういった感情を持つのは積雪で仕事が出来なくなる連中だけで、スキー場関係者にとっては「張り切っていきましょう」の気分なのかも知れない。蒜山の雪質はいわゆる「ぼた雪」で、関東以北のような「パウダースノー」では無いし、積雪期間も短い。したがって古くからある「百合原スキー場」、最近出来た「ベアバレースキー場」にしてもスキー場としては小規模だが、中国横断自動車道蒜山インターチェンジから10分程度の立地条件は魅力があり、雪さえあれば大勢のスキーヤーが押しかけ、大いにスキーを楽しんでいる。

 

 

 

 

 

 

 

野ウサギの足跡 法華道民氏遺作。

  

 

 

 

 

ワ釣魚図鑑HP川・湖より引用画像

 

 

14.          マス釣り
 6月になれば、さすが蒜山の水もぬるみ、思わず川の中をじゃぶじゃぶと歩きたくなる。私は釣りでも、川の中をじゃぶじゃぶ歩きながら釣らなければ面白くない。そうすると、どうしても渓流ではなく、大きな川となる。この時期、川のサカナたちも大いに食欲が増すとみえて「ど素人」の出すサオにもとびついてくる。だいたい蒜山で釣りと言えば「ひらめ」すなわち「あまご」だが、「あまご」は神経質で人影や音に敏感なため、じゃぶじゃぶ歩きまわる人には向かない。このあたりでは、毛ばりで「ドロバエ」「赤バエ」「白バエ」「ウグイ」などがかかる。しかし、やはり数は釣れるが、醍醐味が少ない。釣った手ごたえを楽しめる20cm以上の大物となると「川マス」だ。私は事務所の前の旭川本流で釣る訳だが、常に突然思いついて釣るために餌に困る。そのときは川虫で釣る。川虫は水深20cmぐらいの浅瀬の中で、ゴロゴロしている川石の裏に、糸を張ってくっついている。見てくれはガの幼虫のようで気持ち悪いが、これで釣ると不思議によく大物が食いつく。糸を切られないよう祈りながら釣り上げた時の感激は忘れられない。まさに、自然に感謝できるひと時だ。

 

 

15. カブト虫

 夏になるとなぜか小学校の夏休みの記憶がよみがえる。宿題のわずらわしさ、、川での魚とり、虫取り網の匂い、標本づくりのホルマリンの匂い、初めて見た顕微鏡、太陽で火がつく虫眼鏡等などがよみがえる。とくに私が興味をもったのは昆虫採取だった。そして昆虫の中で最も立派なやつと敬意をはらっていたのが「カブト虫」という訳だ。蒜山にはそのカブト虫のでかいやつ、約4センチ級はざらにいる。私が見た最高は6センチもあった。大体「カブト虫」は樹液の多いクヌギなどの広葉樹に住着いているから、活動の始まる夕方から夜半にかけて木のほこらなどを懐中電灯で探すのが一般的だが、私はそういう探し方はしたことがない。実は内緒の話だが「カブト虫」のでかいやつとめぐり合うには、真夏の夜露の多い日の明け方4時ごろ、周辺で一晩中ついていた最も明るいライトの下のぬれた草の中を懐中電灯で探すとそこに大概いる。 もちろん「カブト虫」だけでなく「クワガタ虫」「糸きり虫」「玉虫」など少なくても4,5匹はいる。高速道路が出来る前は、民家の街灯でもよかったが、高速道路が出来てからは、蒜山インターチェンジのライトが一番強い光となり、どうもそこに集中してしまうらしい。逆にいうとその下に間違いなくいる。しかし高速道路の中に入る訳にもいかず、残念な思いをしている。

 

 

 

 

 

 

かぶと虫の森HPより引用画像

 

 

 

 

背の高いのがトチの木、手前の木はサクランボ

 

16.  トチの木

 「木とのふれあい」という言葉を聞くことがあるが、私はとくに意識して「木」とふれあったということは覚えが無い。ただ、学校の校庭などに一本だけ生えている大きな独立樹に対しては、なぜか親しみを感じる。夏の暑い日、その木陰で昼寝したり遊んだりしたことの感謝の気持ちからだろうか?「木」というのは不思議なもので、独立樹には親しさや優しさを感じるが、本数が増えるにしたがいその様態が変わっていくようだ。そう言えば山の大ベテランで、ペンションを営む「山の師匠」からこんな話を聞いた。「蒜山山麓に茸取りに行き、道に迷ってしまった。夕暮れとなりだんだん暗くなっていく巨木の森の中で、木々たちが「ヒソヒソ」あるいは「カサカサ」声を出し、ずっと見ているような、押し寄せてくるようなものすごい恐怖を感じた」と言っていたことを思い出す。だからと言うわけでもないが、私が木とふれあえると感じるのは独立樹にかぎられる。蒜山には文化財に指定されている「原林の黄金杉」「黒岩の山桜」「福田神社の大イチョウ」など長い年月を経た立派な独立樹もあるが、我家には幹回り140cm樹高17mの「トチの木」(洋名マロニエ)がある。20年ほど前に「川上村の木」ということで村から苗木をいただき庭に植え、手入れもせずに放っておいたものだ。この木は葉柄が長く大きな手のひら形で「鳥の巣箱」はもちろん、我家の防風・防雪の役割を十分果たしてくれている。また夏には強い日差しをさえぎり、涼しい木陰を作ってくれて、樹の下にいる番犬「チュン」とともにありがたく独立樹の「トチの木」に感謝している。

 

 

17. ススキ

 中秋の名月と言えば「真丸お月さんとススキ」が目に浮かぶ。このススキ、実は蒜山を代表する野草と言ってもよいと思う。ススキの時期は長く、夏の終わりから初雪の降る12月頃まで 蒜山の景観の脇役であったり、主役であったりする。脇役と言えば最近、私の恩師に教えてもらったことだが、画面構成には「ルール」があるようだ。その一つに、「風景写真を撮る時は、手前の草木を少し入れて撮る」というのがある。そうすると対象物の大きさや、広がりが出て安定感もでる。 その手前の草木にススキを使うと秋の風情のある写真がとれるというわけです。 そういえば「中秋の名月」の画面構成に昔からススキを使うのは理にかなった話でもある。ススキが主役の座を占めるときは何と言っても、朝露で氷ついたススキの枯れ穂が暁光に照らされ、ダイヤモンド輝きとなる時であろう。その時はススキの原が一面、白銀に輝き、あたりがなんとも荘厳な光につつまれる。これからの蒜山は、このススキとともに秋が深まっていく。

 

 

 

 

三木ヶ原から大山

 

 

 

自宅前の渋柿

 

 

18. 柿の木
 
 紅葉も終わりに近づけば郷愁にかられ、人恋しい季節となる。その仕掛けはススキ、落葉、木枯らしなどさまざまだが、欠かすことのできないものの一つに「柿の木」がある。同じ柿の木でも「渋柿」こそ、その役にふさわしい。よく絵に登場する「わらぶき民家と柿の木」だ。葉が落ち、上の方にだけ柿が数個残っている柿の木だ。ついこの前まで鈴なりになっていた柿は、一部は焼酎漬してシブを抜き甘柿として食するが、ほとんどのものはすべて干し柿として窓辺に吊るされる。しかし、柿は全部は取らず上の方の数個を残す。それは全部取ると続けて実が成らないと言われているかららしい。蒜山の干し柿は種が多く小粒で西条柿のような大きさや、やわらかさが無いため、けして高級とは言えないが、雪に閉ざされた暖炉のほとりでは俄然人気ものとなる。荒縄の匂いが染み込んだ干し柿は、そのままかじれば甘く、正に故郷の味がする。また「天ぷら」で揚げると絶好の「ビールのつまみ」ともなる。
日本の原風景に「柿の木」が描かれるにはそれが美しい風景と言うよりも、生活の匂いのしみこんだ心の風景だからだろう。

 

 

 

19. こたつ


 12月ともなれば日本全国で「こたつ」がだされる。とりわけ蒜山だけというわけのものではないが、雪深い地域に住んでいると「こたつ」には、またひとあじ違う感慨がある。最近の「こたつ」は電気になってしまったが、このあたりでは今でも「豆炭の掘りごたつ」を使っている家がある。寒い吹雪の日に「豆炭の掘りごたつ」で鍋を囲みながら、熱燗で一杯やるのはこの上なく幸せを感じる瞬間である。 日頃無口な者でも足からポカポカ暖かくなり、増して一杯入るとついついオシャベリになり、今年のイノシシの動きや、鹿が罠にかかったことなどの情報のみならず政治、経済 、文化まで幅広く語り合いが繰り広げられる。そんなとき少しでも顔を見せれば「えーとこえきんさった」と引きずり込まれ、ちょっと一杯のつもりが大酒となり、翌日寝込まなければならないはめになる。しかし、それが分かっていても「まーいいか」と上がり込むのは「こたつ談義」の楽しさであり、貴重な地元情報が得れる魅力なのだろう。「こたつ談義」で語られる情報は「本音」 であり、冬の楽しい情報交換の場となっている。

 

 

 

 

 

 

蒜山の平均的な居間

 

 

 

 

 

 

湯原ハンザキセンターHPより引用画像

(湯原オオサンショウウオ保護センター)

 

20. ハンザキ

 正月から、グロテスクなオオサンショウウオ(ハンザキ)を登場させるのはどうか、という感じも無くはないが、オオサンショウウオは特別天然記念物で、蒜山全域が「特別保護区」に指定されている関係上、どうしても紹介しておかなくてはならないだろう。地元ではオオサンショウウオを口が半分裂けているから「ハンザキ」というのが定説だが、定かではない。
 この「オオサンショウウオ」は特に近年、自然環境保護の動きとともに、太古の時代から変わらない、河川の食物連鎖の頂点に立つ、大変立派な生物であることが認識され、急激にその地位が上がってきた。昼間は河川の深みや岩陰に潜み、カエル、魚類、昆虫類、大きいものは「蛇」まで食べる。湯原町役場前の「オオサンショウウオ水族館」には2m近いワニのような剥製があるが、生存しているものは120程度のものが飼われており、無料で見学できる。近年の護岸工事は両岸コンクリートブロック積みで、 底張りの、いわゆる三方コンクリート工法が定番であったが、これでは水生植物が生えず、魚類の産卵場所や小魚の隠れる場所が無くなってしまい、それをエサとするオオサンショウウオも棲めなくなってしまっている。そのため2001年から、河川工事に際しては事前に生息調査を行ない、生存の可能性のある川は、水生植物の生育が可能な環境ブロックを使用するなどの保護対策を行なうことが義務付けされた。地元に住むものとしても「オオサンショウウオの棲める川」をしっかり守り、自然保護の「ハンザキ大明神」として大切にしていくことを誓っている。

 

 

21. ててっぽう

 24日は立春。蒜山ではこの頃一番雪の多い時期だが、時々暖かい日が続くと北風のあたらない堤防や小川のほとりに、雪が解けて部分的に地面が見えだす場所がある。そこをしゃがんで凝視すると、ポツリ、ポツリと小さな小指ほどの丸い芽が見える。それが「ててっぽう」とこのあたりで呼ばれているものだ。正体は「ふきのとう」の芽だが語源は定かではない。積雪の下で春の気配を感じつつ、氷ついた凍土の間からしたたかに芽を出す生命力から、このあたりでは親たちが、どうぞ「ててっぽう」のように強く育ってくださいという思いがこめられている。食べ方は「おしたし」「酢味噌あえ」「てんぷら」など、いかようにもおいしくいただけるが、若干にがみがあるので、薄い衣で揚げた「てんぷら」をおすすめしたい。最初の一口に「春の息吹」が感じられる貴重な自然の恵みの一つだ。食される場合は、地元の旅館や蒜山高原国民休暇村の和定食にも添えられている時があるが、時期のものなので事前に確認しておかれることをおすすめする。

 

 

 

 

 

 

「山菜名人」HPより引用画像

 

 

 

山菜きのこ専科HP「クレソン」より引用画像

 

 

22. うだぜり

 自然の恵みには雪解けの頃しか食せないものが最近多くなった。その一つに川の水生植物のバイカモ(うだぜり)やクレソン(いたちぜり)などがある。これらは人里の途切れた最上流のアシ原の中に現在でも繁殖しているが、この地域の人は春先の雪解け前のものしか食べない。理由は動物の排泄物の流入を恐れているからだが、もっともこれらの水生植物はとくに水の汚れに敏感で、水が汚れてくるとたちまち姿を消す。下流に出現したことは聞いたことがないので死滅して流れていくのであろう。したがって水の汚れの無い上流にだけしか生き残っていないことになる。そう言えばクレソンは2、3年前には湯船あたりでも見受けられたが、最近はとんと見なくなったが、バイカモは部落周辺の清らかな小川に生育し、「おしたし」や「とうふあえ」などで食べる。クレソンはステーキやサラダなどに添えられたりしているいわば脇役で、癖が無く苦味も少ないのでそのまま水洗いしただけでも、ヘルシー感があるのでドレッシングやマヨネーズをかけてドンブリに山盛りでもおいしく食べられる。実はこの野生のバイカモやクレソンが今年も食べられるかどうか、ほんとに心細くなってきている。

 

 

 


23.
 源五郎ブナ

 4月頃にうまいものは数多いが、今回は「源五郎ブナ」を紹介したい。このフナは蒜山と言っても湯原ダムにしか生息しない。元々は漁業組合が放流したアユの稚魚に混じっていて繁殖したものらしいが、フナといっても30cm級がざらにいる。故郷の琵琶湖ではかの有名な「フナずし」にしている貴重な食材である。
この魚「魚釣り大好き人間」にとっては、とびきり面白いターゲットらしい。サオ釣りはもちろん、産卵期に群れで回遊するこの時期には、岸から投網で捕る方法と、船で立網を張りめぐらし捕獲する方法がある。この時期のフナは、鯉よりは身が締まっており、かつ、産卵前で油もしっかりのっているので湯どうしをしてあらいにして食するのが一番うまい。私は少々小骨があるので「から揚げ」にして食べるのが好きだ。
ポカポカと暖かい日に静かな湖畔に小船を浮かべ、ゆっくり立網をたぐりよせフナをはずしている湖畔の風景は、また一味違う蒜山のビューポイントだ。

 

 

 

 

 

釣魚図鑑HP「川・湖」より引用画像

 

 

 

 

「山菜きのこ専科」HPより引用画像

 

 

 

 

24. 木の芽

 5月は昔から「木の芽立ち」と言って、動植物が一気に芽吹き、自立神経の弱いものはおかしくなると言われている季節である。何も蒜山だけのことでは無いが、それだけ自然のエネルギーが発生する時期なのだろう。確かにこの時期の「木の芽」を食すると、精力剤が入っているかと思うぐらい元気がでる。そしておいしい。代表的なものは「タラの芽」と「コシアブラの芽」だ。木の芽と言えば「サンショの芽」を連想するが、今回は「タラ」と「コシアブラ」を紹介したい。「タラ」は木なのか草なのか私は知らないが、とにかくトゲがあり、クマザサや野バラなどと群生している。 その根を乾燥させ、煎じて飲むと糖尿病に効くと言われているが、とにかく日頃は荒れた土地に、したたかに生き抜いている強い自然植物である。「コシアブラ」はトゲも無く、雑木の中で控えめに生きているが、その分だけ自生が少なく貴重な食材となっている。どちらも食通が4月中頃から5月の中頃まで目の色を変えて探し求めている食材だ。食べ方は片栗粉を入れてカリッと揚げた「天ぷら」を塩だけで食べるのが一番おいしい。「コシアブラ」は食通に言わせれば「コシアブラ知らずに料理を語るな」と言われるだけ、癖が無く実に上品な味がする。しかし私はやはり少々苦味な癖のある「タラの芽」の方が好きだ。トゲがあっても、葉っぱが開き加減の揚げたてをバリバリと口一杯ほおばり、冷たいビールで流し込む時、冬の間に失われたビタミンが一気に補充された感で満たされ、至福の時がやってくる。書いているうちにもっと食べたくなってきた。やはり次の休みにも「タラの芽」採りをしよう。最近は蒜山ICの入口にある「風の家」の野菜市に地物が4月末から5月中頃まで出荷されているので、そちらでの購入が無難だ。ただし11時までに行かないとまず売り切れている。

 

25. タニウツギ

 「中にいるとその良さが分からないが、外から来るとよく分かる」ときどき聞く言葉である。この花の良さもその部類に入るようだ。実際、長く蒜山に住んでいる者にとっては、この花がそばに咲いていても気づかない事が多い。いや気づいていても美しいとか、可愛いいとかの意識を超えて、咲いていてあたりまえと流してしまっているからかも知れない。この花は田植のはじまる5月初旬から6月中旬ぐらいまで、蒜山高原のいたるところに咲いている。このあたりでは「田植え花」とよんでいるが、特徴は 1. 花弁が淡い赤やピンク。 2. 咲いてる期間が長い。 3. 雑草のような生命力がある。などであるが、一口にいうと地味でしたたかな強さをもった花だ。そのためかどうか知らないが、他所から来た人は蒜山の風土とこの花の特徴が重なり合い、地元の花として強く印象に残るようだ。去年から私の所属している「蒜山ライオンズクラブ」では、田植え花を蒜山を代表する花として、苗木を栽培し「田植え花ロード」などを作ろうと夢見ている。今年は去年からはじめた苗木づくりで180株ほど生育しており、夢の第一歩を踏み出すと聞いている。

 

 

 

 

 

 

 

三平山南斜面に群生しているタニウツギ。

 

 

口水産HP 「うなぎ蒲焼ロングより引用画像

 

 

26. うなぎ

 湯原ダムの上流にいる「うなぎ」は、旭川北漁業組合が琵琶湖や浜名湖から稚魚を仕入れ、アユなどと一緒に放流したものである。放流後2年〜3年ぐらいで食べごろの大きさに成長する。通常は流速のゆるい淵や岩陰に生息しているが、真夏の7月中頃〜9月中頃には湯原ダムに集まってくる。それをターゲットに釣りキチ連中の「夜づけ」が開始される。「夜づけ」の方法はサオ、カゴ、流しなど様々であるが、地元の釣り名人に言わせると山ヒルの流仕掛けが一番良く取れるらしい。しかし残念なことに餌の「山ヒル」を手に入れることが至難の業だ。素人はやはり堆肥の下に生息する「大ミミズ」が一番無難だろう。実はここだけの話だが、蒜山のうなぎにはすごいのがいる。地元で「かにくい」とよんでいるやつだ。するどい歯と太く短い体が特徴的で、皮は厚くゴムをかむような歯ごたえがある。日頃は本流に生息せず、水量の少ない急傾斜の渓流にいて、昆虫や沢ガニなど、何でも食ってしたたかに生き抜いている。こいつを食うと正直夏バテなど一発で吹き飛んでしまう精力抜群の食材だ。しかし近年はその姿を見かけなくなった。実に寂しいことである。

 

 

 

27. マムシ

 「うなぎ」の後に「マムシ」と続けば、少々うんざりするが、旬を語れば夏のマムシははずせない。旬(しゅん)と言えば、その生物が一番いきいき輝いている時期と解釈しているからだ。マムシが他のヘビと異なるのは毒があるからだけではない。元々ヘビは湿地を好むが、マムシはやや乾燥した広葉樹林帯がお好みだ。普通ヘビなどの爬虫類は体外で産卵孵化するが、マムシだけは違う。体内孵化し秋口に出産する。マムシの動作は鈍く近づいても急に襲ってきたり、逃げたりはしない。しかし秋口の子持ちのマムシは動作はのろいが何にでも噛みついてくる。
 最近かまれた話は余り聞かないが、30年ほど前、観光バスのガイドさんが草むらの陰で用足しをしているところをかまれ、はずかしさで誰にも言わずにおいたため、結局亡くなった話は今でも語り継がれている。それ以後蒜山のどの病院にも常に血清が用意されている。噛まれた時は何をおいても直ちに病院にかけ込むのが一番だ。
 当社の社員は、現場から一夏のうち平均2、3匹は持って帰ってくる。ただ最近はカラアゲにしたり、焼いて醤油で食べたりというグルメ指向から、粉にして漢方薬として飲む方向に変化している。味はメザシを生でかじった味だが、ヘビの大嫌いな私も、マムシだけは珍味として押さえておきたい何かを感じている。

 

 

 

 

 

 

「ぽちぽち山里暮らし」HPより引用画像

 

 

 

蒜山富掛田から毛無山を望む

 

28. 秋の空気

 高原の四季の変り目にはそれぞれ特有の感傷がある。夏から秋へは多くの人が去っていく。全国的にも7月、8月は高校野球など、多くのイベントや夏祭りが盛んな時期である。蒜山でも大宮踊り、花火大会、さかなつかみどり大会など多くの人々が集うイベントがあり、夏は一年で一番入りこみ客数が多くなる。その喧騒が高校野球の終焉とともに突然、潮が引くように静かになっていく。気温も朝夕はめっきり冷えこみ、窓辺から秋の空気がすっと入ってくる。ちょうど夏の暑い日に冷房の効いたデパートに入った時の感じに似ているが、空気の味が違う。無粋な話だが、蒜山高原の匂いは牧場に撒く牛の「屎尿」の匂いがアクセントになってる。春先と夏の終わりには牛舎に溜まった屎尿をバキュームカーに吸い込み、牧草地の肥料として噴霧する。もっともこの作業は世界中の放牧場でも見られる光景だが、当然、噴霧直後はたえられない匂いを発する。しかし2、3日すると匂いは徐々におさまり、忘れかけていた記憶を呼び戻すような、かぐわしい香りに変わっていく。そう言えば香水には花の香りだけでなく人間の汗など、通常考えられない「臭いもの」が入っていると聞いたが、うなづける。この時期の空気にはそれらが入り混じっており、人恋しい夏の終わりに、胸をかきむしられるような感傷をひきおこす要素の一つになっているのかもしれない。

 

29. 蒜山おこわ

 「おこわ」とはもち米を蒸したものを言い、全国各地でさまざまな「ご当地おこわ」がある。「蒜山おこわ」には押し麦、あるいは米を1割ぐらい混ぜている。具はフキ、ワラビ、ゼンマイ、トウモロコシ、シイタケ、鶏肉、油揚げ、栗、銀杏、こんにゃく、にんじん、ゴボウなどを季節や好みに応じ、細かくきざみ塩、砂糖、醤油、みりん、油などで味付けし、具を煮る。そして水に浸しておいたもち米、押し麦をザルに揚げ、具を混ぜてから蒸し器で蒸す。味付けは料理人の味覚、食材、工程などによって、各家々でそれぞれ微妙な違いがあり、漬物と同じように各家の自慢料理となっている。このように多くの種類の具が入った「蒜山おこわ」は、他に汁物と漬物があれば十分「大ご馳走」なので、昔から何らかの祝い事がある時にはよく作られてきた。ところで「道の駅」などに並んでいる栗には、天然の小さな柴栗と形の大きい丹波栗がある。最近の「蒜山おこわ」には丹波栗を使ったものも見かけるようになったが、私はそれを本物の「蒜山おこわ」と思っていない。実は、天然の柴栗は農薬で殺虫しなくても虫食い率がうんと少ないのである。天然の柴栗には虫食い環境を生き抜いた、したたかな強さのようなものが備わり、それが一段と濃厚な味と香りを出しているのだと思う。形は小さく、堅く、料理に使えるようきれいに渋皮までむくのは恐ろしく手間がかかる。それだからこそ天然の柴栗の入った「蒜山おこわ」には作り手の苦労と、温かさが感じられる。

 

 

 

JAまにわHP おふくろの味「蒜山おこわ」より引用画像

 

  

 

  

 

  

 

        

 

きのこ図鑑HPより引用画像

 

 

30. きのこ

 「毒キノコ」の見分けも出来ない私に「きのこ」を語る資格はない。しかし、蒜山の紹介にはどうしても「きのこ」を外すわけにいかないだろう。秋は、全国的にマツタケのシーズンであるが蒜山ではマツタケは採れない。シイタケは長年にわたり栽培され、蒜山を代表する農産品となったが、近年では同品種の中国産が出回り、少なからず地域経済を圧迫している。栽培されているものはシイタケの他に「エノキダケ・ヒラタケ・シメジ」などがあり、地元の食料品店でも販売されている。野生種で数多く自生するアイタケ・シバカツギ・イクチなどは、いずれも独特のクセがある。料理の仕方にもよるのだろうが、私は余り「おいしい茸」と思っていない。「おいしい茸」は、やはり山奥で人知れずひっそりと自生するクリタケ・ヒラタケ・銀シメジ・こうたけ ・なめこ・スギヒラなどであろう。こういうおいしい茸は毎年、大体同じところに自生するため、地元の茸採り名人どうしでも縄張りができている。したがって他人には自生場所を教えないのがルールで、採れた場所を聞くなどはもってのほかである。また、おいしい茸にはどういう訳か、よく似た毒茸がある。くれぐれも用心したことにこしたことはない。ともかくこの時期には、私は食べることのみに専念し、茸採り名人からいただく「おいしい茸」の入った「きのこめし」を腹一杯つめこみ、大いに幸せを感じさせていただいているのである。

 


31.
 自然薯(山芋)

 「自然薯」は粘り気が多いため細切りし、鰹節と醤油をかけていただくか、すりおろしてダシで薄めていただくのが一般的である。最近は、すりおりしたままの「ゴム」状態のものを天ぷらにしたものにも人気がある。この「自然薯」で一杯やると、他につまみはいらず、いくらでも飲める。不思議に悪酔い、二日酔いが少ない、精力抜群のありがたい山の幸である。しかし、この「自然薯」はやすやすと手に入る代物では無い。秋の紅葉が終わりかける頃、木々に絡んだツタ類の中から「むかご」と呼ぶ、自然薯の「実」が付いたツルを探し出し、そのツルをたどりながら、その根を掘り起こすのである。「自然薯」は地中平均1.2mほど根を伸ばす。その道中に堅い石や岩があると、それを抱き込むようにしながらひたすら、下へ、下へと根を伸ばしていく。したがって完全無欠の姿で掘り終えるのは至難の業となる。蒜山には、山芋堀大好き人間が大勢いる。彼らは掘りあがった山芋の付着土、形、色などを見て、味が分かり、同時に掘り起こした人の苦労も知ることができるのである。彼らが最も注目するところは、最深部の「根毛」があるかどうかで、「根毛」がある山芋の堀手に対しては、最大級の評価をするのである。
私も時々、その最深部の根毛付きの山芋をいただくことがあるが、確かに、その掘る苦労がしのばれ、心から感謝の気持ちが湧き上がってくる。その「根毛」のある部分をいただく時だけは、すりおろさず「毛」だけ取り、醤油をかけて姿のままいただいている。この「自然薯」に、寒く厳しい冬でも健康に乗り越えていけるエネルギーを感じるのは、私だけだろうか。

 

 

 

 

 

一街一HPより引用画像  通販あり

 

三木ヶ原 休暇村蒜山高原内

 

32. 粋呑(すいとん)

 一度でも蒜山を訪れた人ならお気づきだろうが、蒜山のいたるところに奇怪な木彫の怪物(HP表紙参照)がいる。 この怪物は随筆家串田孫一氏の手によって生み出されたものであるが、今では蒜山のシンボルの一つとして定着し、愛されている。元々、山陰地方には昔話や怪談が多く、小泉八雲の怪談話や泉しげるのゲゲゲの鬼太郎など、愛すべきお化け達が多く生み出されている。蒜山の「すいとん」は、まだまだ若輩者であるが、現代のハチャメチャな混乱社会において、断固たる正義の味方としての存在意義は、ますます大きくなっている。

 

 

 

 

 

 

                                             

 

33. 冬の空気

 蒜山の2月は大寒を過ぎても雪が多い時期である。私は1日の始まりを朝630分と決め、実行して7年程になるが、紹介したい「冬の空気」は、しっかり雪が降り積もった朝の空気である。 早朝、外へ出るとまず純白の世界が眼に飛び込む。そしてゆっくり深呼吸をする。そうすれば実にさわやかで爽快な気分を味わえる。科学的理由は知らないが、何かしら気持ち良いのである。自分なりにその理由を考えてみると、まず無臭があげられる。自然界には海や森の匂いがあり、人々が集う都会や田舎にも油やゴミの匂いがある。まして寝床や家の中にはそれぞれ独特の、強い生活の匂いがある。それが突然、無臭の世界へ出るわけだから、さわやかなのは当然と言えば当然である。次に花粉、細粒の砂、ホコリ、大気汚染物質などや、空気中を漂う菌類なども雪に付着し、浄化されていると思われる。病院に入院した人ならよくおわかりだろうが、退院の日、一歩外に出て空を見上げた時の気持ち良さにも若干似ていると思う。積雪に朝日があたり、空気中の水分が乱反射しておきるダイアモンドダストもこの時期に多く発生する。この冬の蒜山のさわやかな朝の空気は是非、多くの方々にも吸っていただきたいと思っている。

 

 

 

 

 

中井川から大山方向

 

 

 

 

天の岩戸遥拝所―この前に大きい岩倉があり、その中に2畳ほどの空間がある。 法華道民氏遺作

 

 

34. 蒜山高天原説(その1)

 川上村史によれば、「昭和5年頃、京都の考古学者長田某は「蒜山高天ヶ原説」の研究を始め、その後同じく京都出身で勝山中学校(現勝山高等学校)の教諭を務めた佐竹淳如も同じ研究を試み、昭和20年頃その成果をパンフットにまとめた。それが次第に世人の関心をよび、一時「岩戸せんべい」のみやげまで売り出されたこともあったほどである。
近頃八束村に在住の思想家延原大川も、その著「高天原」の中で、蒜山地方を高天原とする研究考証に力を注いでいる。それによると、西北磐座山頂の近くにある荘厳な天然の巨石群を千古の秘跡「天磐座」とし、ここで神代の神事が天照大神を中心に行われていたと推定している。村びとが、今もこの神社を「磐座さん」とよんで親しんでいるのも故なしとしえないのである」(954ページ)と書かれている。昭和50年になって、佐竹淳如氏の教え子で、この地方出身者の集まりである「東京山中会」の中塚貴志氏ら有志が、佐竹淳如氏の遺稿「神代遺蹟考」を「高天原は日留山高原だった」にとりまとめ出版し、再び蒜山高天原説が浮上した。時を同じく川上村においても「村おこし」の目玉として、「天の岩戸伝説」のある磐座山9合目の「天磐座」まで、遊歩道や展望台などの整備をして、歴史観光スポットを誕生させている。余談だが、佐竹淳如氏は成果の発表後、戦時中の「皇国史観」に触れたことにより、朝鮮の学校に転勤させられ、高まっていた世人の関心は、急速に縮小していった。その後、パッと燃え上がり、パッと冷える景気を称して「岩戸景気」というようになったと聞いている。

 

 

 

 

 

 

35. 蒜山高天原説(その2)

 「岩戸景気」の語源ともなった論文「神代遺蹟考」の著者佐竹淳如氏は、東京山中会出版「高天原は日留山高原だった」の本の中で「京都大学文学部を卒業後、勝山中学校の英語教師として大正15年から昭和2年までの1年間、奉職。その期間中、古墳研究が発端で川上村郷原に昔から語りつがれていた「高天原は郷原(今の川上村)にある」という言い伝えに興味をもち研究され、この説をまとめられた 」と当時の教え子たちが語っている。そもそも「高天原」とはいかなるものか。丸山林平編「校注 古事記」には伊邪那岐命が天照大御神 に「汝が命は、高天原を知らせ」と統治委任したことが記されている。有名な高天原の出来事である「須佐之男命の暴状」それに激怒した天照大御神の「天の石屋戸ごもり」は川上村郷原の「天磐座」であったと、今でも地元で伝えられている。「神代遺蹟考」では古墳、地名について、概括的な考証を行っているが、現存する大規模円墳の四つ塚古墳(古墳時代後期)や村落周辺に散在する多くの群成古墳から、古代に高度な文化があり、多くの人々が居住していたことは十分推測できる。 また、地名については 記紀(古事記・日本書紀) に関する地名が、確かに多い。大蛇、社田、鶏声、祝詞、鳥居乢、黒岩間屋、茅部、御陵、塩釜、山王川原、野土呂、白髪、天王、豊栄、神庭、神、神集、神退、神代、神村、神原、神谷 などがあり、隣接する鳥取県側にも鏡ヶ成、般若、高麗、高千穂、日向などがあり、興味深い。ところで蒜山という漢字は明治の頃付けられたもので、古来「ひるぜん」は「日留山」と書くのが正しいという説があり、東京山中会は「神代遺蹟考」の復刻本発行にあたり「高天原は日留山高原だった」としている。「日留」の意味は天照大御神の御在所を意味しているものだが、中蒜山登山道5合目には今でも石の祠に「日留神社」とあり、「日

留」の字は古くから使われていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

県道中福田湯原線  大山みち藤森起点

 


36.
 大山道

 測量士の大先輩、伊能忠敬氏作成の伊能中図中国・四国(写し)を注視すると、国道181号(伯耆街道)、国道313号(出雲街道)は、現在の勝山町高田から日本海に向けて二股に分かれている。その両沿線には、現在も使われている地名が多く、昔から真庭の地は多くの往来があったようだ。 伊能図には書かれていないが、ちょうどその真中あたりに大山に向けて、累々と続いている一本の山道がある。 今の湯原町豊栄〜種〜藤森〜川上村鳥居が乢〜郷原〜延助〜内海谷〜鳥取県下蚊屋〜大山寺を通る山道である。「なお山陰にしてみればこのコースが伊勢道にもなったようで、延助入口にある明和5年(1768)の道標が、それを示している。(川上村史5ページ記載)」とある。この往来は大山信仰と牛馬の取引が目的であったらしいが、明治の頃までかなりの人々の往来があったことが、郷原宿、延助宿の有り様を見ても窺い知れる。勝山町の高田硯、蒜山の郷原漆器、蒲細工など、現在でも珍重されている物品は、大山参りの高級なお土産とされていたのかも知れない。
また、鳥居が乢には松尾芭蕉の100回忌に郷原の俳人鳥飼朝尚によって「啼く雲雀 仰ぐに高し 西の富士 溪雲人覧水」と記した句碑「雲雀塚」が建立されている。そこからは大山、烏ガ山、皆ガ山、蒜山三座に囲まれた蒜山盆地が一望できる。長く暗い急な山道を歩いてきた者にとって、突然開けた広大な天空からの視界はどれほど感動し、素直に神に感謝する気持ちになれたか、立派な石の鳥居のある遥拝所がそれを物語っている。

 

 

 

37. 方言

 方言はその強弱によって、地域とのかかわりの深さが窺い知れる。江戸時代には脱藩者、密偵、犯罪者など、よそ者を発見するために、あえて方言をつくったという説もあるが、何も方言があるのは日本だけでなく、世界中の国々でも同じようにあるらしい。蒜山の言葉は美作、備中、伯耆弁が混在しているが、岡山よりは鳥取に近い言葉である。とくに気になる言い回しは、あいずちを打つときの「だぁぜ」「だー」会話の語尾に付ける「何々しんさい」「何々ですけぇ」「何々だがや」否定するときの「いけん」多くを表する「えっと」阿呆な人を表する「だらず」怖い時に発する「けぉとー」ちょっかいを出すことを表す「ちょびかい」文句を言うことを表する「ぐずり」真っすぐをあらわす「すぐい」などは今でもよく使われている。両道をかける人を表す「ふたまたごうやく」酒に酔った人を表す「よいたんぼ」変骨な変わり者を表す「けちょう」驚いたときに発する「おー、すかいのー」などは、有名人が使えば流行語大賞にもなりえる面白さがある。

 

 

 

 

鳩ヶ原から大山方向 大山みち 法華道民氏遺作

 

 

蒜山下徳山地内(社田から上福田方向)  法華道民氏遺作 

虹の下にヒルゼンナビの事務所があります。

 

 

38. たんぼ(圃場)

 岡山県北部の「たんぼ」には、中山間地特有の棚田方式が多く、昭和40年代までスキ、クワによる手作業によって耕作されていた。棚田方式の圃場は、用排兼用のいわゆる「たごし」が多く、細長く蛇行する圃場の耕作や、水の管理は並大抵のものではなかったと思われる。1980年以降、「食料自給」を合言葉に、国家プロジェクトの圃場整備事業が日本各地で開始され、真庭地域の圃場も漸次改良されていった。蒜山は盆地で平地が多く、他の地域と比較すると恵まれた土地柄であるが、新たな圃場は、3反区圃を標準とした用排分離方式で、少しでも作業効率が高くなるよう設計されている。完成した圃場では作付け面積も増大し、一反当たりの収穫量も多くなったが、1990年以降の減反政策によって、水田は牧草地になり、最近は、一面のそば畑となっている。あの食料自給の掛け声は何だったのかと思えるが、蒜山に限って言えば、あたり一面の「そばの花畑」は立派な観光資源であるし「そば」自体も商品として評価が高くなっている。しかし、見事に咲き誇る一面の「そば畑」を見るにつけ、圃場整備事業に関係した者として、何とも複雑な思いが去来している。

 

39. 菜メシ

 全国的には「大根メシ」と言うのかもしれないが、蒜山家庭料理のメニューに「菜メシ」という料理がある。料理方法はいたく簡単で、間引きした大根の葉をみじん切りにし、サラダ油でいため、塩、醤油、酒で味付けし「ごはん」を混ぜるだけのものである。要するに大根の葉しか入っていない焼メシである。それが何故か「デリシャス」なのである。理由は健康的でシンプルな味だからと思うが、素材の問題も考えられる。私は虫食いの無い大きく成長した大根の葉は食べない。蒜山は大根の産地であるが、どうしても害虫駆除のため一度は葉に農薬を散布する。もちろん出荷時には洗浄しているので健康に差し障りは無いのだが、どうしてもおいしく感じないのである。しかし、完全無農薬で成長した葉も虫食い状態がひどく、茎も堅くて食べられない。要するに農薬をかける以前の間引きした小さく細い大根、いわゆる間引き菜が理想的なのである。したがって間引き菜は春、夏の間引きの時期しか手に入らないので、目の前に大根は山ほどありながら、時期にしか食べられない貴重な料理メニューとなってしまっているのである。

 

 

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